物語は第二次世界大戦から現代、そして700年以上先の未来へ。
時代を超えてつながる人々の記憶が、「わたし」という存在を揺るがしていく。
本作は、原爆投下の記憶を内包する少女と、戦時中を生きた人物の遺伝子を受け継ぐ男の出会いを通して、戦後の日本を生きる私たち人間が、どこから来て、これからどこへ向かうのかという問い(=Question)を、今を生きる我々に投げかけます。
演出家の白井氏はこう語ります。
「人間の身体は、遺伝子によって親から子に伝わり受け継がれていきます。しかし、人間の記憶や知識、そして思いや想念といったものは、そのまま受け継がれるわけではなく、一個の個体の死とともに消滅してしまいます。
しかし、インターネットの普及によって、人類の個々の脳が繋がり、AI(人工知能)がすべての思考を置き換えるようになりました。この先、我々人類は個々の肉体すら持たない、ひと塊の脳で繋がるゲル状のようなものになってしまうかもしれません。その時、個々の記憶と想念と思考の行方はどうなるのか。
この作品は「残される記憶」と「個の行方」をめぐる物語として捉えたいと思うのです。」
2019年に『ニムロッド』で芥川賞を受賞した作家・上田岳弘による長編小説『キュー』(新潮社刊)は、テクノロジーが発達し続ける人間社会の中で、「人間とは何か」「“わたし”とは誰なのか」を問いかける作品です。 2017年から2018年にかけて文芸誌「新潮」にて連載され、単行本化された本作では、第二次世界大戦期、現代、そして700年以上先の未来という3つの時間軸が交錯します。物語では、AIやネットワークといったテクノロジーによって現実と情報の境界が曖昧になっていく世界の中で、人間の記憶や存在の意味が描かれていきます。演出は、白井晃。長年の構想を経てついに舞台化が決定しました。本作で、上田岳弘の文学を、演劇により拡張させた新たな「キュー」として立ち上げます。
「私の中には第二次世界大戦が入っているの――」
“残される記憶”と“個の行方”をめぐる壮大な物語が、実力派俳優陣によって誕生する!
主演は、白井晃演出の舞台『マーキュリー・ファー Mercury Fur』(2015年)で凄烈な印象を残し、映像のみならず舞台界でも確固たる地位を築いてきた瀬戸康史。以来、白井氏との再会と新たな作品創りを望み続けていた瀬戸の想いが実を結び、満を持しての待望のタッグがここに実現。本作では平凡な心療内科医として暮らしながらも、突如見知らぬ組織に拉致され、壮大な事件に巻き込まれていく主人公・立花徹を演じます。
立花徹の高校時代の同級生で、前世の記憶を持ち、「私の中には第二次世界大戦が入っているの」と鮮烈に言い放つ渡辺恭子役には、有村架純。白井晃演出の『ジャンヌ・ダルク』(2014年)で初舞台にして鮮烈な主演を務め上げて以来、実に5年ぶりの舞台出演となります。瀬戸と有村の共演は2017年の映画『ナラタージュ』以来9年ぶり。数々の名作を経てキャリアを重ねてきた二人が、白井晃の緻密な世界観の中でどのような化学反応を見せるのか、期待が高まります。
そして、立花徹と知り合いで製薬会社に勤める会社員・東藤恭子には、近年『マリー・キュリー』や『PRETTY WOMAN The Musical』など多数の話題作に出演し、ミュージカルでの活躍が目覚ましい石田ニコル。冷凍睡眠から目覚めた人間に語りかける自動音声のような存在・Lost Langage No.9には、スーパー戦隊シリーズ『爆上戦隊ブンブンジャー』の主演で鮮烈なデビューを飾り、主演ドラマ『コントラスト』へ出演。内田英治監督がメガホンを取った映画『TOKYO BURST -犯罪都市-』の公開が控えているなど、今最も勢いのある若手俳優・井内悠陽。立花徹を拉致した秘密結社の構成員・武藤勇作には、ドラマ『ちるらん 新撰組鎮魂歌 江戸青春篇』、大河ドラマ『豊臣兄弟』、映画『愚か者の身分』など数々の映像作品に出演。舞台では、白井晃演出の舞台『マーキュリー・ファー Mercury Fur』(2022年)で過激で残虐なパーティーの首謀者・スピンクス役を演じ、それまでのコミカルなイメージを覆す圧倒的な存在感と抜群の貫禄で舞台を支配しました。凶暴さの裏に潜む「人間味」や「内面の悲哀」までをリアルに表現した緻密な演技で、唯一無二の存在感を放つ加治将樹が脇を固めます。
さらに、立花徹の祖父であり、半世紀以上寝たきりで過ごしている男・立花茂樹を演じるのは、白井晃演出舞台『住所まちがい』や『溺れた世界』に出演し、作品の根底を支えてきた名優・田中哲司。舞台作品に確かな説得力と重厚感をもたらす存在として、本作でも圧倒的な足跡を残します。
実力派俳優陣と白井晃によって生み出される『キュー』。人類の過去と現在、その到達点が壮大なスケールで立ち上がるとき、世界に潜むわずかな違和感に、ふと気づかされるかもしれません。
この観劇体験が「あなた」の世界の見方に変化をもたらすキッカケ(=Cue)となることを願っています。ぜひ劇場でお確かめください。
あらすじ
平凡な心療内科医として暮らしていた立花徹(演・瀬戸康史)は、ある日突然、秘密組織「等国(レヴェラーズ)」の構成員・武藤勇作(演・加治将樹)に連れ去られる。
そこで知らされたのは、半世紀以上寝たきりだった祖父・立花茂樹(演・田中哲司)が突如目を覚まし、姿を消したという事実だった。
その行方を追う鍵を握るのは、高校時代の同級生で、「私の中には第二次世界大戦の記憶がある」と語る渡辺恭子(演・有村架純)だった。さらに、徹の知人で製薬会社に勤める東藤恭子(演・石田ニコル)も、この不可解な出来事に巻き込まれていく。
一方、700年以上先の未来では、Lost Language No.9(演・井内悠陽)とともに、人類の未来を左右する計画が始動しようとしていた。
戦時下の日本、現代、そして遠い未来――。
3つの時代に散らばった記憶が交差するとき、「わたし」という存在の輪郭が揺らぎはじめる。
“残される記憶”と“個の行方”をめぐる、時空を超えた物語。
スタッフ プロフィール・コメント
【脚本・上演台本】上田岳弘(うえだ・たかひろ) 1979年生まれ 兵庫県出身
早稲田大学卒業後、2013年に『太陽』で第45回新潮新人賞を受賞しデビュー。15年に『私の恋人』で三島由紀夫賞を受賞し、16年にはイギリスの文芸誌「GRANTA」でBest of Young Japanese Novelistsに選出された。18年に『塔と重力』で第68回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞するほか、19年には『ニムロッド』で第160回芥川龍之介賞を、22年には『旅のない』で第46回川端康成文学賞、24年には23年に発表した『最愛の』で第30回島清恋愛文学賞を受賞。舞台作品として、白井晃が構成・演出を務めたパルコ・プロデュース2022『2020』(22)で脚本を書き下ろしている。そのほかの著作に『異郷の友人』『引力の欠落』『K+ICO』『多頭獣の話』など。
《コメント》
原作『キュー』の連載を開始したのは、ちょうど9年前のこと。作家として活動を始めるよりも前から、ぼんやりとしたキューの全体像が頭の中にあって、いつか書かなければならない作品であると、ことあるごとに周囲に漏らしてきました。原爆の投下、憲法九条、AIの進化等の事象間にある確かな繋がりを意識しながら書き上げた、僕自身にとって重要な作品です。
あれから9年後、『キュー』が舞台で上演されます。演出は、若い僕の創作欲に火をつけてくれた舞台『マーキュリー・ファー』を手掛けられ、『2020』で初めてご一緒させていただいた白井晃さん。瀬戸康史さんや有村架純さんをはじめ、素晴らしい実力と魅力を兼ね備えた俳優の皆さんが、時に難解とも言われてきた『キュー』を心震わせる舞台にしてくださることに、静かに興奮しています。
戦争や暴力に制御が効かないことが露呈した今の世界で上演される、それぞれが一度きりの『キュー』の舞台。多くの人々にこの瞬間を目撃していただきたいと思います。
【演出・上演台本】白井晃(しらい・あきら) 1957年生まれ 京都府出身
早稲田大学卒業後、2002年まで遊◉機械/全自動シアター主宰。14年よりKAAT 神奈川芸術劇場のアーティスティック・スーパーバイザー、16年4月から21年3月まで同劇場の芸術監督を務めた。22年4月より世田谷パブリックシアター芸術監督。ストレートプレイからミュージカル、オペラまで幅広く発表し、緻密な舞台演出で高く評価される。近年の主な演出作品に、『ジン・ロック・ライム』(26)、『シッダールタ』(25)、、『Medicine メディスン』(24)、『マーキュリー・ファー Mercury Fur』(15/22)、『アルトゥロ・ウイの興隆』(21)、『アーリントン』(21)、『No.9-不滅の旋律-』(15/18/20)、『怪人と探偵』(19)、『春のめざめ』(17/19)、『華氏451度』(18)、『バリーターク』(18)、『オーランドー』(17)、『アダムス・ファミリー』(14/17)、『レディエント・バーミン』(16)など。読売演劇大賞優秀演出家賞、湯浅芳子賞(脚本部門)、佐川吉男音楽賞、小田島雄志・翻訳戯曲賞などの受賞歴がある。
《コメント》
小説「キュー」が刊行されたとき、私はその世界観に打ちのめされました。私たち人類の現在の立ち位置と今後を予見する未来図に圧倒されたからです。その驚くべき視線に恐れを感じながらも、この世界をなんとか演劇という生身の表現に転化できないかと夢想しました。そして、その思いは初めて小説を読んだときから決して消えることはありませんでした。私たち人間はこれからどこに向かうのでしょうか。第二次世界大戦後の日本に生きる私たちは、どこから来て、どこにいて、この先どこに向かうのでしょうか。原爆投下の記憶を身体に持つ少女と、その状況に対峙した人物の遺伝子を受け継ぐ男の出会いは、時間を超え、空間を超え、肉体の形状をも超えてつながり続けます。効率化は、猛烈な孤独感を私たちに与えます。だからこそ、肉体を失ってもなお、愛を求めてやまないのです。原作者である上田岳弘氏の協力を得て、この作品を演劇化できることに至福の喜びを感じています。恐らく、私にとって最も重要な作品になると思います。
キャスト プロフィール・コメント
●立花 徹(たちばな・とおる)役
瀬戸康史(せと・こうじ) 1988年5月18日生まれ 福岡県出身
2006年に俳優デビュー。以降、舞台・映画・ドラマと幅広く活躍。15年に白井晃氏演出『マーキュリー・ファー Mercury Fur』で注目を集め、17年に舞台『関数ドミノ』において第72回文化庁芸術祭演劇部門新人賞、22年に映画『愛なのに』において第44回ヨコハマ映画祭主演男優賞を受賞。近年の主な出演作に【舞台】『サボテンの微笑み』(26)、『A Number-数』(24)、『笑の大学』(23)、『世界は笑う』(22)、【映画】『木挽町のあだ討ち』(26)、『ドールハウス』(25)、『スオミの話をしよう』『違国日記』(24)、【ドラマ】『再会〜Silent Truth〜』(26・EX)、『にこたま』(25・FOD/Amazon Prime Video)、『119エマージェンシーコール』(25・CX)、『くるり~誰が私と恋をした?~』(24・TBS)などがある。
《コメント》
演出の白井さんとは、僕の俳優人生の転機となった作品『マーキュリー・ファー』以来、十数年ぶりにご一緒します。
あの時、白井さんの演出を受けていなければ、俳優を辞めていたかもしれません。それくらい大きな出逢いでした。
有村さんとは 3 度目の共演です。落ち着いた癒しの雰囲気があり、内からエネルギーが溢れ出している印象です。
この『キュー』という作品も、ある人物たちの出逢いがキーワードのひとつです。
僕が演じるのは立花徹という産業医。
現代人を象徴するような人物です。
そんな彼が、様々な人や、人のようなものと出逢い、見ようとしてこなかった自分自身を含めた物事に向き合っていく物語です。
今時代は、SNS やスマートフォンの普及から情報が一気に飛び込んできて、それに加え日常生活でやらなければいけない事も多い。気がついた時には自分が何者なのかわからなくなっている。
そんな恐怖を感じる瞬間があります。
『自分を失わないために、あなたはどう行動する?』
稽古に入る前の今、そんな問いを投げかけられているような気がします。
●渡辺恭子(わたなべ・きょうこ) 役
有村架純(ありむら・かすみ) 1993年2月13日生まれ 兵庫県出身
2010年にドラマ『ハガネの女』(EX)でドラマ初出演。15年の映画『ビリギャル』では日本アカデミー賞優秀主演女優賞・新人俳優賞をW受賞するほか、17年には朝の連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK)でヒロインを演じるなど、ドラマ・映画・CMに多数出演。21年の映画『花束みたいな恋をした』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、22年の映画『前科者』では第47回報知映画賞主演女優賞を受賞している。近年の主な出演作に【舞台】『友達』(21)、『ジャンヌ・ダルク』(14)、【映画】『さとこはいつも』(9月18日公開予定)、『マジカル・シークレット・ツアー』(6月19日公開予定)、『ブラック・ショーマン』『映画 太陽の子 特別版』『雪風 YUKIKAZE』『花まんま』(25)、【ドラマ】『海のはじまり』(24・CX)、『さよならのつづき』(24・Netflix)、『アクターズ・ショート・フィルム3「Prelude〜プレリュード〜」』(23・WOWOWプライム)、『どうする家康』(23・NHK)などがある。4月12日よりドラマ『GIFT』(TBS)に出演中。
《コメント》
舞台への挑戦を続けていきたいと考えていたタイミングで、約12年前の『ジャンヌ・ダルク』でお世話になった白井晃さんからお声がけいただき、本当に嬉しいです。今回は恩返しのような気持ちで臨めることに、大きな意味を感じています。また、20代前半の頃にご一緒した瀬戸康史さんと、再び共に戦えるご縁も心強いです。
初めての舞台では右も左もわからず、客席に背を向けて立ってしまうような状態だった私に、白井さんは同じ目線で一から向き合ってくださいました。そんな白井さんと今、どのようなセッションができるのか、どう作っていけるのか、今からとても楽しみです。
本作は小説を原作としていますが、私たちの身体を通してしっかりと具現化していきたいです。
劇場でしか味わえない体験がお届けできるよう、ぜひ多くの方に足を運んでいただければと思います。
公演概要
公演名称 舞台『キュー』
原作 上田岳弘『キュー』(新潮社刊)
演出 白井晃
上演台本 上田岳弘 白井晃
出演 瀬戸康史 有村架純 石田ニコル 井内悠陽 加治将樹 田中哲司
有川マコト 川合ロン 西山友貴 黒田勇 須﨑汐理
スタッフ 美術:⽯原敬 ⾳楽:益⽥トッシュ 振付:⼭⽥うん 照明:齋藤茂男 ⾳響:井上正弘 ⾐装:伊藤佐智⼦
ヘアメイク:川端富⽣ 映像:上⽥⼤樹 アクション:渥美博 演出助⼿:渡邊千穂 舞台監督:村⽥旬作
宣伝美術:加藤秀幸 宣伝スチール:TOKI
宣伝衣装:伊藤佐智子 宣伝ヘアメイク:川端富生/新山いずみ(有村架純)
プロデューサー:貝塚憲太、一倉梨紗 エグゼクティブプロデューサー:渡辺ミキ
企画協力 新潮社
主催・企画・製作 ワタナベエンターテインメント
公式サイト https://the-9.westage.jp
公式X @watanabe_engeki
ハッシュタグ 「#舞台キュー」「#ワタナベ演劇」
【東京公演】
公演期間 2026年11月15日(日)~29日(日)
会場 東京芸術劇場プレイハウス
チケット料金 オープニングチケット(11/15・16・17公演) S席 10,500円/A席 9,000円
平日 S席 11,000円/A席 9,500円
土日祝 S席 12,500円/A席 10,500円
U22(全日程) 7,500円 ※⼀般発売よりチケットぴあのみの取り扱い
※全席指定・税込 ※未就学児⼊場不可
チケット発売日 2026年8月1日(土)10:00
お問合せ ワタナベエンターテインメント TEL:03-5410-1885(平⽇11:00〜18:00)
【大阪公演】
公演期間 2026年12月4日(金)~6日(日)
会場 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
チケット料金 平日 11,000円
土日祝 12,500円
U22(全日程) 7,500円 ※⼀般発売よりチケットぴあのみの取り扱い
※全席指定・税込 ※未就学児⼊場不可
チケット発売日 2026年8月1日(土)10:00
お問合せ ワタナベエンターテインメント TEL:03-5410-1885(平⽇11:00〜18:00)

