日本を揺るがした実際の事件をテーマに、寓意あふれる蛙の世界に写し取った傑作
米ソ冷戦激化の時期を背景に、シベリア抑留者の帰還をめぐって当時の日本社会を揺るがせた実際の事件をテーマに、木下順二が書き下ろした『蛙昇天』。発表当時から大きな注目を集め、三越劇場での初演を観劇した、当時まだ高校生であった演出家の故・蜷川幸雄は、衝動的なものをそのまま表すこの演劇表現に惹かれ、この観劇体験が演劇を志すきっかけとなったと後年語っています。
本作は誠実に生きたいと願った青年が、苛烈な政治的対立の抗争の場に引きずり込まれ、ついに自殺へと至った事件を、寓意あふれる蛙の世界に写し取った傑作です。
世間のありように揺さぶられ、容易にゆがめられてしまう「個」という存在の脆さを生々しく抉り取り、人間の存在の意味をも私たちに問いかけてきます。
彩り豊かな、豪華キャスト・スタッフ陣
本作の演出を手掛けるのは、KAAT初登場のウォーリー木下。国内外で高い評価を受けた東京2020 パラリンピック開会式で見せた独創的かつ包容力ある演出は、異なる価値観や立場の違いをつなぎ、観る者に深い共感を呼び起こしました。音楽はウォーリー木下からの信頼も厚いトクマルシューゴと、のこぎり演奏家としても活躍する音楽家の西村直晃がタッグを組んで世界観を盛り上げます。振付はモモンガ・コンプレックスのメンバーとしても活動し、『SHELL』『パンドラの鐘』などの振付を担った北川結、仁科幸が務めます。
真実を伝えようと立ち上がるも、世間の波に翻弄される主人公・シュレを演じるのは、ミュージカルからストレートプレイまで数多くの舞台で主演をつとめ、一人舞台や楽曲など、活躍の場を意欲的に広げる中山優馬。シュレの元同僚・グレ役に、実力派として話題作への出演が続く矢崎広。シュレの母・コロ役に元宝塚歌劇団雪組トップで、退団後も舞台・映像で幅広く活躍する音月桂。そして、唯一無二の存在感と絶妙な愛嬌で魅了する温水洋一、ドラマ「相棒」の監察官としてもおなじみで、幅広い役柄を自在にこなす神保悟志、23年まで「猫のホテル」に所属し、印象的なキャラクター性を放つ市川しんペー、透明感のある佇まいと繊細な感情表現が魅力の中村里帆が出演。また、久ヶ沢徹、町田マリー、百瀬朔、白又敦など舞台を中心に活躍する俳優が、個性豊かな蛙たちを演じます。
個人と社会のうねりが生々しくぶつかり合い、人間の存在意義や生きることの意味を探求する傑作戯曲を、壮大なスケールでお届けします。
▼出演者コメント
今回、大役をいただけたこと、大変光栄に嬉しく思います。
胸の奥底を突き刺すセリフの数々で、説明の難しい感情になる瞬間が多くあります。
この想いを肉体に乗せて精一杯取り組もうと思います。
演出のウォーリー木下さんや、素敵な共演者の皆さまとご一緒出来ることもとても楽しみにしています。
劇場で見届けて下さい。 -中山優馬-
またKAAT神奈川芸術劇場に戻って来られることを、嬉しく思います。
次に挑むのは、なんと“カエル”の世界。
ウォーリー木下さんとは今回が初めてのご一緒となりますが、今から非常に楽しみです。
そして、素晴らしいキャスト・スタッフの皆様と共に、木下順二氏の不朽の名作に挑めることを、大変光栄に感じております。
今回のKAATでの旅路が、どんな出会いや景色へ繋がっていくのか。
ぜひ劇場で見届けていただけたら嬉しいです。
皆様のご来場を、心よりお待ちしております。 -矢崎広-
私は一体、どう在りたいのか?
戯曲を読んだあと、私の中の何かが疼き、この問いが生まれました。
この作品、そしてコロという役と向き合いながら、私自身ともじっくり向き合うつもりです。
ご観劇くださる皆さまにとっても、この作品が、ご自身と向き合うきっかけや、心に残るカケラとなれば嬉しいです。
初めて立たせていただく劇場、そしてご一緒する皆さまとの時間に、今から胸が高鳴っています。
劇場でお待ちしております。 -音月桂-
▼スタッフ・キャスト プロフィール
作 木下順二
1914年、東京に生まれる。東京帝国大学大学院修了。「彦市ばなし」「夕鶴」などの民話劇から出発し、「風浪」「山脈(やまなみ)」「オットーと呼ばれる日本人」「巨匠」といったリアリズムの本流に立つ戦後演劇のひとつの型を創り出した。『平家物語』を舞台にした「子午線の祀り」は新劇、歌舞伎、能、狂言などあらゆる分野の俳優が集まり創り上げた戦後演劇史上最大級の作品である。
演出 ウォーリー木下
戯曲家・演出家。93年、神戸大学在学中に劇団☆世界一団(現sunday)を結成。特に役者の身体性を重視した演出が特徴。テキストに関しても、戯曲以外のものを使用することが多い。映像や音楽を取り入れた言葉を発しない、ノンバーバルパフォーマンス集団 THE ORIGINAL TEMPOのプロデュースを行い、エジンバラ演劇祭にて5つ星を獲得。その後、スロベニアや韓国、ドイツなどと国際共同製作を行い、海外からも高い評価を得ている。ストリートシアターフェス ストレンジシード静岡など様々な演劇祭でフェスティバルディレクターを務めている。メディアアートとパフォーミングアーツの融合で注目を集め、従来の”演劇”という概念を超えた新しい挑戦をし続けている。近年の代表作は、東京2020パラリンピック開会式(演出)、『ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」』シリーズ(演出・脚本)、『チャーリーとチョコレート工場』、『Mrs. GREEN APPLE 2023-2024 FC TOUR “The White Lounge”』(ミュージカル演出)、ミュージカル『町田くんの世界』。第49回菊田一夫演劇賞受賞。
中山優馬
2006年から芸能活動をはじめ、08年NHK連続テレビドラマ『バッテリー』でドラマ初出演にして初主演を務める。25年、26年5月には、“作・演出・出演”を自身で担当する『ONE MAN』シリーズを開催するなど、活躍の場を広げている。主な出演作品に【映画】「ホーンテッド・キャンパス」(16)「曇天に笑う」(18)、【舞台】『Endless SHOCK』(18~24)『血の婚礼』(24)『スイートホーム ビターホーム』(25)『破果』(26)など。
矢崎広
1987年生まれ。山形県出身。2004年『空色勾玉』でデビュー。以降、舞台、ドラマ、映画、ナレーションなどジャンル問わず幅広く活躍。近年の作品として【舞台】『ダーウィン・ヤング 悪の起源』、『アメリカの時計』、『テンペスト』、『ハリー・ポッターと呪いの子』、『ボニー&クライド』、『Play a Life』『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』『最後の事件』など。最近では、彩の国シェイクスピアシリーズ2nd『リア王』にてエドマンド役で出演。また夏に2人芝居『母さん、ラブソングです。』の出演が控えている。
音月桂
埼玉県出身。1998年宝塚歌劇団に入団。2010年雪組トップスターに就任。現在、舞台、ドラマ、映画などに出演中。近年の主な出演作に【舞台】『スリー・キングダムス』『アメリカン・サイコ』『この世界の片隅に』『斑鳩の王子 -戯史 聖徳太子伝-』『ひげよ、さらば』『ナイツ・テイル』、【映画】「劇場版MOZU」、【ドラマ】「大丸愛は選択する」「モンスター」など。7月にPARCO劇場『うま』への出演が控える。
あらすじ
ここは池の底に広がる蛙の世界。自分たちの住む池に突然石が投げ込まれる事件が起こる。取り囲むアオガエルたちは、これは陰謀ではないかと騒ぎ始める――。
アオガエルの国では、2大政党のデモフリ党とカプリ党が政権争いを繰り広げていた。デモフリ党の構成員たちはカプリ党を陥れようと、あれやこれやと画策する日々を過ごしている。そんなさなか、アカガエルとの戦争に負け、捕虜に取られていた仲間たちの帰還が活発化。帰ってきた一部メンバーから、あるアカガエルの一言についてデモフリ党に告発が舞い込む。カプリ党から捕虜が「アカガエルになるまでは帰してもらっては困る」と要請があった、と言っていたというのだ。格好の争いの種となったこの発言をめぐって、大騒動が勃発する。その矢面に立たされたのは、この一言をアオガエル語に通訳した帰還兵のシュレ。たくさんの思惑が渦巻く中、シュレは証言台に立つ。彼はただ、あるがままの真実を伝えようとするのだが――。
「なぜ人は線を引くのか -Why do people draw the lines?」-2026年度KAAT神奈川芸術劇場、テーマ作品
本作は当劇場2026年度のテーマ「なぜ人は線を引くのか -Why do people draw the lines ?」を掘り下げる3作のうちの1作です。
個人と民衆、真意と解釈、政治対立――。テーマに結びつく、様々な線とその揺らぎを、懸命に生きる蛙たちの視線から見つめなおします。
―2026年度テーマ作品―
- 『ジャングル』 作・ジョー・マーフィー & ジョー・ロバートソン 演出・長塚圭史
10月10日(土)~11月1日(日)
- 『蛙昇天』 作・木下順二 演出・ウォーリー木下
10月下旬~11月上旬
- 『もうちょっとしたら、このあたりで』(仮) 作・兼島拓也 演出・田中麻衣子
2027年1月下旬~2月上旬
『蛙昇天』~公演概要
作:木下順二
演出:ウォーリー木下
出演:
中山優馬 矢崎広 音月桂 中村里帆 市川しんぺー
久ヶ沢徹 町田マリー 百瀬朔 白又敦
北川結 内海正考 中村駿 塚越志保 肥田野好美 米原有我
神保悟志 温水洋一
演奏:西村直晃 成田七海 清田瞬
スタッフ:
音楽:トクマルシューゴ 西村直晃
振付:北川結 仁科幸(モモンガ・コンプレックス)
美術:松生紘子
照明:松本大介
音響:星野大輔
衣裳:西原梨恵
ヘアメイク:新井健生
演出助手:友花
舞台監督:川除学
制作進行:ycoment
会場|KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
日時|2026年10月下旬~11月上旬
公演URL|https://www.kaat.jp/d/kaeru2026
主催・企画制作|KAAT神奈川芸術劇場
助成|文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)
独立行政法人日本芸術文化振興会

